毎年、4月13日から16日にかけて滋賀県長浜市で行われる「長浜曳山まつり」の子ども歌舞伎(子ども狂言)をご紹介します。
長浜曳山祭は、京都の祇園祭、岐阜県高山市の高山祭と共に、日本三大山車祭の一つで、山・鉾・屋台行事ともにユネスコ無形文化遺産に登録されています。
日本三大山車祭で、子ども歌舞伎が演じられるのは長浜曳山祭だけですが、子ども役者がユネスコ無形文化遺産の屋台行事を担っているのも素晴らしいですね。
2022年に初めて子ども歌舞伎を拝見しました。
女物の着物を着ている役者さんは、かわいらしい女の子に見えますが、役者は全員男の子です。
子役の皆さんが、本物の役者さんのように大人顔負けの見事な名演技を披露されています。
こちらの「男の花道」は、ことさら傑作だと感動しましたので、詳しくご紹介していきますね。
「長浜曳山まつり」日程
■ 4月13日 十三日番 18:00より 出番山組町内にて狂言執行
■ 4月14日
・自町狂言 午前中
・登り山 午後~16:00
・役者夕渡り 19:00 八幡宮から一八屋辻へ
■ 4月15日
・役者朝渡り 8:30までに 八幡宮到着
・狂言奉納 9:25 八幡宮 その後、曳山博物館 南側、御旅所でも行われます 9:45~18:20
・戻り山 御旅所から各山組町内へ
■ 4月16日 自町狂言 9:00~20:00
2022年「長浜曳山まつり」子ども狂言(子ども歌舞伎)ユネスコ無形文化遺産
高砂山(宮町組)
外題(演目)「男の花道」
◆三役
振付 市川団四郎
太夫 竹本乾太夫
三味線 豊澤湊祝
◆役者
加賀屋歌右衛門 岸本知也 13歳
加賀屋東蔵 渡邉祐紀 9歳
漢方医道庵 山内敬仁 9歳
えびす屋お仙 岩崎陽翔 7歳
柏原源三郎 丸岡瑛翔 11歳
士生玄碩 大澤凛太郎 10歳
◆ あらすじ(高砂山ホームページ参照)
一、東海道金谷宿なる 旅籠むさし屋の場
大坂の人気役者 加賀屋歌右衛門はその人気を認められ、憧れの江戸の檜舞台に上がることに成り、師匠 加賀屋東蔵始め一座の人達は歌右衛門を人気役者にするのだと張り切り意気揚々と江戸に向かう。
しかし、実は歌右衛門は三ヶ月程前から目を病み、このままでは失明すると医者に断言され、それを東蔵に打ち明けられず失意の中、東海道は金谷の宿にさしかかる。
舞台はむさし屋の場面。歌右衛門は東蔵が持ってきた江戸の中村座から届いた手紙を裏返しに読んでしまい、これまで隠し通してきた目の病のことを東蔵に知られてしまう。
「役者にとって眼は命。見えないのならもう生きてはいけない」と歌右衛門は絶望を感じ、井戸に身を投げようとしていた。
そんな歌右衛門を引き止めたのは、「歌右衛門は眼が見えない」と浪花座の落日の舞台で見破った医師の土生玄碩。
一度は死ぬことも覚悟した歌右衛門は、西洋医学を習い、眼の治療を専門とする玄碩に、その眼を任すことにした。
風眼という難病であると診断した玄碩は、歌右衛門のために命をかけた手術を行い、歌右衛門の眼は蘇った。
ご恩に感謝する歌右衛門の謝礼を断った玄碩はその代わりに、「江戸一番の花形役者になれ、わしも江戸で立派な医者になる、その時にわしが会いたいと申したときは必ず会ってくれ」という男と男の堅い約束を交わし、ふたりは金谷の宿を後にした。
二、料亭えびす屋 奥座敷の場
四年後、旗本武士 柏原源三郎のえびす屋での酒席に、江戸一番の花形役者になった歌右衛門の師匠が歌右衛門は酒の席で踊れないことを伝えるため挨拶に伺った。
頂いた祝儀を返しにきたのだが、歌右衛門の心意気を理解してもらい、その場を去る。
入れ替わりに源三郎を訪ねたのは、漢方医の道庵と眼医者の土生玄碩である。
源三郎と酒に目がない玄碩が酒を交わす中、酒の肴にと道庵は踊りを披露した。
源三郎は、面白い踊りで楽しませた道庵に続いて、玄碩も踊るように命じた。
余興として踊りを促された玄碩は、「自分は医者であり、太鼓持ちではない」と断る。
源三郎も「一度言い出したからには、後には引けぬ、刀にかけても踊らすぞ」と反す。
間に入ったお仙の「御前様の御威光ならばあの加賀屋歌右衛門でもこの座敷へ呼んで踊らせることもできましょう」という言葉に、玄碩は歌右衛門とのいきさつを話した。四年前にふとした縁で歌右衛門の眼を治したことがあるのを。
それを聞き、源三郎は眼を治したことに恩があるなら、江戸一番の花形役者である歌右衛門をここへ呼べ、そして玄碩の代わりとして踊らせなければ命はないぞと言い放つ。
舞台に立ち歌右衛門へ宛てた手紙をえびす屋お仙に託し、玄碩は男と男の約束を信じて歌右衛門を待つことにする。
玄碩に与えられた時間は七つの鐘が鳴り終わるまでの時間。もし歌右衛門が来なければ玄碩の命はない。
三、劇中劇 八百屋お七 火の見櫓の場
そのころ、歌右衛門は舞台の上で、「八百屋お七」を演じていた。
多くの観客の前で人形振りの芝居をしている最中に、お仙が届けた玄碩からの手紙を東蔵が歌右衛門に見せる(この場面の演出が見せどころ)。
手紙を読んだ歌右衛門は観客に懇願する。芝居半ばだが舞台から降り、四年前に見えなくなった眼を治していただいた命の恩人、土生玄碩のために、相生町のえびす屋に急いで向かわなければいけないことを観客に話す。
玄碩に降りかかった一大事。ここでご恩を返さなければ人の道がたたないことを。七つの鐘までに駆けつけなければ玄碩は、腹を切らなければならないことを涙乍らに観客に訴えた。
一刻を争う歌右衛門の話を聞いて観客は歌右衛門に「行って来い」と送り出す。
必ず帰って来ることを舞台の上で誓い、歌右衛門は急いで玄碩の元へ向かう。
(訴える歌右衛門と実際に芝居をみている観客とのやりとりが楽しめる、他に類をみない演出です)
四、元の料亭えびす屋 奥座敷の場
えびす屋では一つ、二つと鐘の音が進み玄碩の窮地が迫っていた。
手紙を渡し戻ってきたお仙も、道庵も、歌右衛門が間に合うことは不可能だと、源三郎に詫びるように玄碩に促す。
それでも玄碩は、歌右衛門との男と男の約束を信じて、源三郎へ詫びることを拒んだ。
そして、とうとう七つ目の鐘の音が鳴り響く・・・
果たして舞台を中座しえびす屋へ向かう歌右衛門は、命の恩人を救い、男と男の約束を全うすることができるだろうか・・・
こちらのYouTube動画で、2022年の「長浜曳山まつり」や長浜の町の様子が撮影されています。
■ YouTube Hi64
◆ 曳山まつりの日 滋賀県長浜市 2022
◆ 長浜曳山祭り 2022 子供狂言(子供歌舞伎)演目「男の花道」 高砂山(宮町組)
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